PORK/極上の肉

思いの伝承と昔の味の追求

棚田百選に選ばれ、いかにも棚田らしい景観を楽しむことができる「緑とロマンの里」飯田市千代地区。
この緑あふれる壮大な自然環境を感じるのも極上な体験だが、ロマン感じる極上の人間ドラマが千代の岡本養豚(「千代幻豚」生産農場)にはあった。
小さな養豚農家が大規模の養豚農家や“いわゆるブランド豚”に対抗して勝てることはないかと考えた末、人と同じ事をしていてはだめだという発想にたどりついたそうである。

その中で出会ったのが昔の美味しさを思い出させる「中ヨークシャー種」。昔の日本では主流であったが、現在では天然記念物と言われているほど希少となっていた豚種に着目した。その豚種を岡本養豚の職人(岡本陸身さん)が25年の歳月をかけ、改良を重ねて、味を追求し作り上げ、今の「千代幻豚」ができあがってきたのである。

品種のかけあわせから始まって、飼い方にとまどったり、豚にかわいそうな思いもたくさんさせたり、頭数をそろえるまでにはロでは言い表せない程の苦労があったようである。出来上がった豚の肉をありがたくいただいてみては改良と、納得するまで繰り返す。現在も更なるチャレンジは続いている。
今では、第一人者である父(岡本陸身さん)の気持ち、姿勢を受け継ぎ、娘(串原佳世さん)が正直にそして常に肉質追求を忘れない姿勢で、食の幸せを我々生活者に届けてくれている。串原さんの語ってくれる一言ひとことにその思いと重みを感じ取れるのである。

余韻を楽しめる豚肉の旨味

「千代幻豚」の肉は一口食べただけで、その柔らかさ、脂身の甘さ、口溶けの良さを感じることができるのは言うまでもない。多くの食通とされている方々にも高く評価されている味である。
また、「千代幻豚」の肉は一口目に限らず、その旨味の余韻を楽しめる肉という特長も有していると考えられる。豚肉特有のクセが少なく、後口感がすっきりしていて、しつこくなく、何枚でも食べられる美味さをもつ。スッキリした余韻を楽しめるように思えるぐらいである。

首都圏で開催された南信州飯田をPRするバーベキューイベントにおいても、料理を担当してくれた 「酢飯屋」大将の岡田大介さんが、「焼いて美味い、煮て美味い、こんなに透明感があって、アクがほとんどでない極上の豚肉を見たことがない」と絶賛してくれている。イベント当日は、シンプルな焼肉と豚汁として提供してくれたが、「千代幻豚」を通じて長い時間、温かみのある味を堪能できた。その温かさに生産者の思いも伝わってくるかのようである。これが真の田舎の昔の味なのであろう。

消費者から愛用者へ

岡本養豚の「千代幻豚」は、一緒に「中ヨークシャー種」を守る活動に賛同し、理解している方、そして生産者を本当に大切にする方たちが販売先となっている。ゆえに、販売者には原則1頭売りを前提に販売契約を結んでいる。

生産者の「千代幻豚」に対する気持ち、姿勢を正直に受け止め、食の幸せを感じるためにも、我々は消費者から愛用者になるべきである。単に肉として消費するのではなく、この豚や生産者に出会えた幸せを感じつつ、旨みと思いを味わうことが大切である。「千代幻豚」に愛着を持っていただくためにも、生産者の思いと現状を知り、日々愛用しつつ、正しく伝えていくことが必要になる。そのためにも、現地で生産者に触れ、生の声を聴くことで極上体験を共有しよう。